東京に出てきたけど挫折を味わい困窮する幼馴染の若者3人。一発逆転を狙って身代金3000万円の誘拐計画を実行する。しかしそこには真の黒幕が、という話。

読みやすく話の展開はよいと思ったけど、読後に物足りなさを感じた。登場人物の作り込みが足らない事が原因だと思う。

まず実行犯3人のうち2人に挫折した若者という感じがしなかった。1人は頭が働くし、1人は危険を顧みない行動力がある。これが負け組としてのリアリティを欠いた感じがした。

誘拐犯として電話する時の冷静な対応も不自然に感じました。3人のうち1人に元役者志望という設定を付与しているのに電話は別の人間が行っている。

元役者志望の人物は、すぐ熱くなる設定が付与されていて、こういうシーンで使えなくなってしまったという事もあると思う。

事件を追う刑事は妻を病気で亡くしていて、多忙さからろくに一緒に過ごせなかった事を悔いている、という設定も生きてこない。

娘を誘拐された父親も仕事を優先し家庭をおろそかにしてきたという設定だけど、そこにこの刑事の設定がうまく絡んでこなかった。

これは刑事と娘を誘拐された父親の間に、以前から確執があるという設定が足枷になったように思う。その設定がない方が、二人のやり取りを面白くできたのではないだろうか。

最後のどんでん返しも唐突すぎた。特に伏線はなかったように思うし行動の動機が不明。伏線は読み落としがあるのかもしれないけれど・・・