AIによりフェイク情報を作るコストが下がると、大量にフェイク情報が拡散され、ウェブにある情報の信頼性がさらに失われる。ということが、昨今危惧されるようになり、それは現実のものとなりつつある。

しかし以前からインターネットは理想から遠ざかり壊れてしまったと言われている。主な原因は無料の情報・ウェブサービスの収入の源泉が広告にあることだろう。

より多くの人に広告を見てもらうことがインセンティブとなる無料の情報・サービスは、人々の感情を刺激する方向に偏りがちである。人々に真実を届けたり、人生に有用であることよりも、広告の試聴数、クリック数を稼ぐ方向に傾いていく。

この状況をAIのフェイク情報拡散は打破してくれるかもしれない。AIが大量のフェイクを拡散するようになれば、その認識も人々に広がるだろう。「これはAIが作り出したフェイクかもしれない」と人々はあらゆる情報に疑念を持つようになる。

さらに人間の口で訴えている動画すらAIが偽造したフェイクかもしれないという疑念が生じるようになると、もはや出どころ不明の情報はほとんど何も信用できなくなってくる。

それを危惧する声は多いが、自分は別にそれで構わないのではないかと思う。そもそも無料の情報のほとんどは収集するに値しないものばかりである。人生の地肉になるものなどほとんどなく、ただ無駄に感情を刺激され、貴重な人生の時間を削るものでしかない。

かつて私がまだテレビを見ていた頃、ニュース番組をほぼ毎日見ていた。しかし振り返ってみて、ニュース番組の内容で人生の血肉になっていることなど何も思い浮かばない。結局、自分にとって大事な情報は、天気予報や台風、地震などの災害情報、消費税がいつ上がるかなど自分に直結する事くらいではないか。

戦争のリスクも自分に直結することだが、そのリスクは個人でコントロールできない。コントロールできない点において、南海トラフのような自然災害と大差がないように思う。気にはなるので大枠の国際情勢は追っているつもりだが、細々したことは追ってもしょうがないと思っている。

もはや無料の情報をほとんど見ていないが、それで特段困ったことはない。結局、人生の地肉となった知識の多くは本で読んだことである。あとは実体験である。無料の情報に時間を消費するくらいなら、本を読んだ本がいいし、身をもって体験した方がいい。

AIのフェイク拡散は、無料の情報のほとんどは本当は見なくて構わないものだった、という気づきを多くの人に与えてくれるのではないか。

ChatGPTのような有用なAIは、今のところ月額課金制が主流になるように見える。人々がAIのフェイク情報で汚染されたウェブを避け、チャット型のAIを月額課金で利用することに時間消費が移行していくように思う。

そうなるともはや無料のフェイク情報を拡散して、広告収入を得るというビジネスモデルも崩壊する。こうして壊れてしまったインターネットは、さらに破壊され、そして再生の道へ向かうのではないか、と期待している。