話題になっていたので読んだけれど、ちょっと思っていたのと違う内容だった。十二人兄弟のうち六人が統合失調症を発症。その症状について詳しく書かれていることを期待したけど、そうでもなかった。

統合失調症を発症しなかった末の姉妹の苦労、統合失調症は家庭環境のせいという説が主流だったが、研究が進み遺伝による影響が大きいという説が支持されるまでの経緯。これらが主な話の流れだった。

著者が統合失調症となった一人一人の症状を掘り下げたり、本人の口から症状を聞くという内容にはなっていない。そもそも彼らのうち今も存命な人々は、すでに高齢である。

統合失調症は若年層で発症し、早期に適切な治療しないと治らないようである。彼らの時代はまだ治療法も確立しておらず、そのまま高齢になってしまっている。よって、発症当時のことを聞いても本当の記憶か妄想かはわからないだろうし、そういった受けごたえも難しそうに思える。

それゆえ発症しなかった末の姉妹の体験が中心となっているのだろう。統合失調症を発症した本人がどのように感じているかは、他の本を当たったほうがよいと思う。

ただ興味深かったのは、統合失調症になると呪術的思考が強くなることである。同様の症状は別の本でも読んだことがある。共通するのは親が信心深く几帳面な性格で、それを子供にも強要していることである。

統合失調症を発症するかどうかは遺伝的要因と環境の組み合わせであるという。その遺伝的要因は信心深さと几帳面さという形で現れ、さらにそれらを子供に強要するという環境要因が、統合失調症を発症させるということなのかもしれない。

そして、統合失調症を発症すると、神様の指示とか儀式めいたことをしたり、呪術的思考が強くなる。私の母親は認知症が進行し幻聴が聞こえるようになってから、統合失調症と似たような症状になり、やはり呪術的思考が強くなった。

近代化して義務教育が普及するまで、呪術的思考するのは当たり前だったし、これは人間の本能でもあるのだろう。統合失調症になり脳機能が正常に働くなることで、理性から本能の呪術的思考が表に出るようになるということなのかもしれない。