ヒト(ホモ・サピエンス)の近隣種であるチンパンジーや猿が、ヒトとどのようなところが共通しているのか知りたくて読みました。色々「へ〜」と感心することが書かれていて、まさに読みたかった内容でした!

著者は長年、ニホンザルその他霊長類の研究をしている方で、エビデンスがあることや、著者の観察経験による知見を用いて、本書は書かれています。エビデンスのない著者の観察経験から書いていることは、あくまで個人の解釈であると一言添えています。

ゲノム解析でヒトはアフリカで誕生し世界各地に散らばった。ヒトとチンパンジーの祖先は同じで、その祖先からチンパンジーに枝分かれした後、ヒトに枝分かれした。と言われています。

ゲノム解析の結果こうでした、という話だけだと現実感がないところもあるのですが、本書では、チンパンジー、その他類人猿、猿に見られるヒトと共通する特徴、行動が挙げられており、共通の祖先を持つことを感じさせるものがあります。

ヒトの赤ん坊に指を差し出すと握り返してくるのは条件反射らしく、一人で行動できない猿やチンパンジーの赤ん坊が、母親にしがみついて運搬してもらうという自然選択的行動の名残のようです。

ヒトの赤ん坊の前で表情を作ると、赤ん坊もそれを真似しようとしますが、それはチンパンジーにも見られる行動らしい。そしてヒトもチンパンジーも時期を過ぎると、それをしなくなるそうです。

猿の社会性も興味深かったです。オス猿は独り立ちできる年齢になると群れを出ていくのに対し、メス猿は自分が生まれた群れにずっと残り、母親や祖母との関係もずっと続くらしいです。そして母親が娘の子育てを手伝うこともあるとか。

また猿やその他霊長類と比べると、ヒトは出産可能な時期を終えてから亡くなるまでの時期が長い。そのような事からヒトは母親一人で子育てすることを前提に進化してこなかったこと、太古から母親や祖母が娘の子育てを手伝ってきたであろうことがうかがる、という視点に説得力がありました。

母猿が死んでしまった赤ん坊をミイラになっても離さずに行動すること、その死んだ子供を見失うと探そうとすること、一度赤ん坊を死なせてしまった母猿は次の子供の子育てに慎重になること。これらの話も大変興味深かったです。