VIVANT、話題だったので見みました。お金をかけた序盤はおもしろそうで期待したのですが、5話あたりからその期待は萎んでしまい、最終的にあまりおもしろくなかったという印象です。レビューも賛否が分かれるようですね。

私が物語にハマれなかった理由は、リアリティに欠ける、キャラクター設定の甘さ、不要なロマンスです。意外な展開で驚かせることに重きを置いて、作り込みの甘さを感じてしまいました。

以下、ネタバレになります。

まず、乃木の多重人格という設定が無意味に感じました。当初は、平常時はお人好しな人格、別班任務時は強気な人格という切り分けがあるように見えました。序盤、タクシーの運転手にだまされて砂漠に放置されるという失態は、平常時の人格の方がやらかし、強気な人格の方に脳内で怒られる描写になっています。

しかし物語が進むと、この境界が曖昧になっていきます。平常時の人格でも冷静に状況分析し、銃の扱いに長け、任務をこなしていく。さらにタクシーの運転手に騙される前から、公安の盗聴に気づいていたり冷静に行動していたことが明らかになる。

じゃあ、なぜ砂漠に放置されるような失態をしたのか・・・普段は疑われないようドジなふりをするのはわかるが、この失態はタクシーの運転手と自分しかいない状況で、生死に関わる失態である。後半の平常人格の乃木の有能さは、序盤のリアリティと別人格の存在意義を失わせてしまいました。

序盤の砂漠の遭難シーンは、視聴者に乃木を別班と思わせないため、壮大なスケール感を演出するためのものとしか思えなくなりました。人格は一つで、状況に応じて表の顔と裏の顔を切り替えられるという設定で良かったように感じました。

次はベキの行動原理。孤児を救うために犠牲の出るテロ活動で資金を集めている。この矛盾に納得できる要素が何もありませんでした。復讐は復讐しか生まないと言って事を納めるシーンも、その元凶となるようなテロ活動をしているのは、あなたもではないかと思ってしまいました。

乃木の提案で、犠牲が出ないならその方がいいとテロではなく先物取引で資金を集めるが、世界の諜報機関から正体を隠し続けるくらいサイバーセキュリティに長けているにもかかわらず、先物取引も知らないなんて・・・そもそもテロ行為にたいした理念もないなら、最初からサイバーテロなど死人が出ない方法で資金集めすればよかったではないか。

またベキの妻が死の際に「復讐して」と言い残すけど、公安でもない一般女性がそのような事を言うだろうか。公安として互いに国に忠義を尽くし、死戦をくぐり抜けてきた仲という設定なら、まだリアリティもあったかもしれませんが・・・

終盤のベキの銃に弾が入っておらず、息子に撃たれて死ぬことで罪を償うことが目的だったというオチ。銃に弾が入っていないネタは二度目でまたかという印象。乃木は別班の仲間の命がギリギリ助かるような射撃の腕前を見せたのに、ここでは父親含め仲間意識もあったであろうテントの三人全員殺してしまった。なぜ?

ハッカーにもハッカーらしさがなくリアリティを感じませんでした。別班側につく女性ハッカーも「まさかこの人が」という驚きを与えることに重きを置いたことで普通っぽい女性になり、ハッカーの腕前を見せる時のリアリティが欠如したように感じました。

公安側のハッカーも任務をこなすほどのスキルがあるようには見えない。リアリティを出すならオタクっぽさが欲しかった。大衆食堂(もんじゃ焼き屋?)で、機密情報をしゃべり、映像まで見ているのもリアリティが台無しでした・・・

このようなもろもろの事が気になって物語に入り込めませんでした。あと最近はアメリカでも、いちいちロマンスを入れるなという声があるようですが、このドラマもロマンスは不要に感じました。

同系統のドラマなら、アバランチ、クライシスの方がおもしろかったです。