先日、バーで隣に座った人が話しかけてきた。以前なら話に乗りつつ会話を楽しむことを心がけていたが、曖昧な受けごたえで話をスルーし、会計を済ませて店を出た。

そのお客はマスターとの会話でちょっとめんどくさそうな人に思えたというのもあったが、最近は初対面の人には、このように対応する事が多くなった(塩対応)。相手には申し訳ないが、その方が無難だからである。

思えば自分もお店で似たような対応を受けることが度々あった。バーのマスターが他のお客と話していて、こちらにも話を振ってきたタイミングで、その初対面のお客に話しかけた時などにである。

正直、いい気分にはならなかったが、今なら彼らがそうする気持ちもわかる。たいていそういう対応をするのは40代以上の人に多かったが、私もその年齢になりわかるようになってきた。

振り返ってみて、お客と話して楽しかったことは正直あまりないのだ。バーや個人飲食店には酒や食にうるさい常連客もいる。でも彼らは客商売しているわけじゃないし、どこまでも個人的嗜好によるもので、たいがい独りよがりのものだ。

彼らの話を聞くのが面倒くさくなったし、実際面倒な性格の人間も多い。逆にこだわりのない人は当たり障りのない世間話になるし、それも社会から距離を置いて生活をしている私からすると話を合わせづらいものだ。

特に常連は私にはたいていつまらない人たちだ。変化を望まず同じ行動パータンを取る傾向があるから日々同じお店に通うわけで、そういう人から新しい知見を得られることはほぼない。

そういう人たちと顔見知りになると、店に行って顔を合わせた時、会話しなければならない。それも面倒である。最近はSNSの「おすすめ」の影響もあって、偏った思想に陥っている人も散見され、そういう人たちとは一切関わりたくない。

だからスルーに極振りしてしまった方が安全なのだ。

バーのマスターや飲食店のシェフと話すのは楽しい。彼らは客商売として仕事をしているから個人の嗜好を超えた知識があるし、人それぞれということ、付かず離れずの距離感を心得ている人も多い。

だからまだお客が少ない開店時間と当時にお店へ行き、マスターやシェフとの会話だけを楽しんでサッと店を出る。バーや飲食店はそういう楽しみ方になった。それでいいのだと思う。