隠匿的読書生活

囚われがちの脳を読書で解放

地球が丸いという知識は、多くの人にとって宗教上の信仰と大差がない

私は自分の目で見たことがないのに地球は丸いと思っている。学校でそう習ったからだ。自分で天体観察したり数学的な証明で理解したわけではないし、世界一周旅行をして実体験で理解したわけでもない。ただ学校の授業内容を正しいと信じているに過ぎない。多くの人もそうだろう。

このことを自覚して以来、人々が地球は丸いと信じていることは、宗教の教えを信じていることと大差のないことではないかと思うようになった。日本の学校教育に懐疑的な人ですら、地球が丸いということに関しては嘘は教えていないと信じている。その次元で学校教育を疑う者はほとんどいないだろう。

『人は科学が苦手〜アメリカ「科学不信」の現場から〜』はそのような私の考えを後押しする内容で興味深く読むことができた。実体験が伴わない事に対する知識、およびそれを正しいと信じる根拠は、その知識を与えた者や媒体への信頼によって担保されている、ということがよくわかる内容になっている。

アメリカにはフラットアースの会という地球は平らであると本気で考えるコミュニティがある、ということを私は本書で知ったのだが、読み進めると彼らのことを笑えないとわかる。むしろ直感的には、地球は平らであると考える方が自然であるし、直感に反して実体験もなく丸いと考えるのは、あくまでそのように習ったからである。

本書では進化論、温暖化を信じない人々の思想背景についても、インタビューを通じて述べている。その内容から子供の頃の親や教師から受けた教育、大人になってからの交友関係、誰に対して信用を置いているかが影響しているとわかる。つまり多くの人は科学的な理解で正しいかどうかを判断しているわけでないのだ。

本書の中で印象深いエピソードは、温暖化に懐疑的だった共和党議員の心変わりだ。息子の環境に対して良いことをしてほしいという言葉、議員活動での南極調査、オーストリアの友人とシュノーケリングで見た白化した珊瑚、その原因を教えられたこと、それらが彼の考えを変えた。

彼が考えを変えた要因は、信頼できる人の言葉と実体験なのだ。逆にいうと信頼のない人間が科学的根拠を提示したところで、その情報やデータを信用しないし考えを変えないものなのだ。

本書はフェイクやミスリードが蔓延する情報洪水化時代において、人間関係の質と幅、自分で体験した上で考察することの大切さを改めて教えてくれる。また自分が正しいと信じていることの根拠についてセルフチェックするきっかけを与えてくれるだろう。