隠匿的読書生活

囚われがちの脳を読書で解放

「低度」外国人材を読んで。国を変えその場限りの労働力として使い捨て続けた果てに待つこと

移民の窓口を広げると移民が増え続け、日本が日本じゃなくなるという懸念をネットで見かけるようになって久しい。しかし、より現実的な懸念は、新興国の経済成長して手稼ぎ労働者が減少し、その影響で少子化した日本の労働人口が著しく不足することではないだろうか?

自国の賃金が上がれば、日本に移住したり出稼ぎに来る理由はなくなるだろう。今やコンビニで中国人のスタッフを全然見なくなった。私の地域では中東系の人をよく見かけるようになった。コンビニの外国人スタッフの入れ替わりは、多くの人が肌身で感じることではないだろうか。

本書は私が危惧すべきことを裏付ける内容だった。内閣府の調査によるとこの10年ほどで、中国人の犯罪件数は5分の1程に減ったらしい。本書の著者の面識のある中国人の中にも、中国でカタギの仕事をした方が割にあうと、自国に戻ってまともなビジネスに乗り換える者もいるという。

副題にある「移民焼畑国家」という言葉は言い得て妙である。デフレ&低賃金と言われる日本であれ、自国の賃金より割の良い外国人は出稼ぎに来る。そして自国の経済成長が追いついたら帰っていく。先に経済成長を果たした国の者から、一抜けする形で日本に見切りをつけていく。中国人はその先駆けとなったのだ。

賃金だけを求めて来る外国人が従事する仕事は、日本人がやりたがらなくなって久しく、存在すら認識され無くなったような仕事だ。やりがいを感じられない単純労働、体力を使い、健康を害しかねない、粗暴な人間が多く罵声が飛ぶような仕事である。本書でもそのような労働環境にスポットを当てている。

本書で取材対象となっているのは主に中国人とベトナム人である。都市部で豊かに育った若い中国人、経済成長が出遅れている地方出身の中国人、ベトナム人、きちんとした教育を受けベトナムで働くベトナム人を対比するような形で書かれている。

対象となる国は絞られているが、新興国が経済成長を果たした後、外国人労働者に頼ってきた分野で、近い将来人手不足になる未来を想像できるだろう。本書の後書きあるように、ベトナムの次はカンボジアミャンマーと低賃金労働者の国を移し替えて、いつかは誰も来なくなる・・・まさに焼畑労働市場の食い潰しである。

低度というタイトルから差別的・排外的な印象を受けるかもしれないが、そういう内容ではない。「低度」外国人材とは「高度」外国人材をもじった著者の造語である。高度な外国人材を獲得したいという政府の思惑に反して、語学力も専門知識もない人材が劣悪な単純労働環境に割り当てられている、その現実を描くための言葉である。

冒頭の飲酒事故を起こしたベトナム人の話を読むと、偏見を抱かせることを意図して書いているように感じ、読むのを敬遠する人もいるかもしれない。しかし、著者が自戒の念を込め後書きに書いているように、著者は元々中国人を対象とした取材が多く、あまりベトナム人には馴染みがなかったらしい。

また当初はバイアスがあったことも認めている。ベトナム人相手に取材を続けるにつれ、距離が縮まったようで、後半は無実であろう罪で拘束されているベトナム人に同情を寄せてもいる。逆に中国人に対して淡々と書いているように見えるのは、親しみの感情があるゆえにフェアに書くことに努めたからのようである。

タイトルや冒頭で排外的な内容と判断するのは勿体無いので、後書きの著者の話をまず読んだ方がいいかもしれない。そもそもベトナム人が寮から逃げ出して、不法滞在者となるのは労働環境が劣悪だからなのだ。また彼らに実情を十分伝えないまま日本に送り込んでいる組織にも問題があることがうかがえる。

対して豊かになった中国人の反応も印象的である。日本の文化にあこがれてワーキングホリデー気分で来た若い女性中国人などにもインタビューしている。彼らは家族を養うために理不尽な労働環境でも黙って耐えたかつての弱者ではない。

人権意識も持ち合わせており、それを盾に理不尽な仕打ちにネットを駆使して異国の地で法的に戦おうとする様子も描かれている。それゆえ、日本人側からも彼らを雇うことを敬遠していくようになっていくだろう。著者が言うように彼らはもはや都合の良い使い捨ての奴隷にはなり得ないのだ。

日本では中国の人権問題に触れ、強制労働のような環境で作られたものは不買すべきだ、トレーサビリティが大事だといった話もあるが、本書を読むと日本も他国のことを言える立場ではなく、むしろブーメランで返ってきそうな話である。実際、奴隷的な労働環境で外国人労働者によって生産され、メイドインジャパンとして市場に出回っている商品もあるだろう。

近い将来、低度外国人人材に頼る日本の劣悪な労働環境について暴露され、世界に広く知られるようになり、前倒しでこれら分野の労働力不足に陥るのかも知れない。